【第6話】動物園へ行く予定が、車に乗ったら遊園地に着いた日
夫はとても忙しい人でした。今もですけど。あのころ「24時間戦えますか」というCMがありました。まさにそれを体現しているような、働きぶりでした。
月に一日休みがあれば良い方で、それもゴルフに行くことが多かったです。あれだけ仕事ばかりしていて、自分の楽しみがないのはかわいそうすぎると、私は「もっとこちらを向いてほしい」とは、言わずにいました。いくら丈夫とはいえ、人間の体力には限界があると思うからです。
一度、一緒におでかけしようねと夫から子どもに言ってくれたのに、急に仕事の関係で行けなくなりました。そのとき、息子がとても悲しんで泣いたので、ますます、先に約束をすることを躊躇うようになりました。行けるときに行けばいい。そう思っていました。
二人目の子が生まれ、上の子は小学生に。
そんなあるとき、家族4人で週末に動物園へ行くことになりました。めずらしく、夫が誘ってくれたのです。子どもたちはずっと楽しみにしていました。もちろん私も。その動物園はレストランの評判も良く、ぜひ行ってみたいと思っていましたので、お昼はそこで食べようと思いました。
そして当日。幸い急な仕事の連絡もなく、準備をして家族4人で車に乗り込みました。晴れた良い日でした。
ハンドルを握った夫が、とても楽しそうに言いました。
「隣の県の遊園地が面白いらしいよ。そこに行こう。」
子どもたちと私はポカーン。しばらくフリーズです。
フリーズしている間に車は動き出し、もう遊園地へ行く気まんまんの夫に押し切られました。
こちらが黙っているから、それでいいんだと解釈したのでしょうね。
到着まで、高速道路も使って1時間半ほど。
私は、脱力していました。子どもたちの様子はどうかと気をつけていましたが、まあいいか、といった感じに見えたので、私も、まあいいかと無理やり思うことにしました。
お天気が良かったのもあり、遊園地は気持ちのいい場所でした。子どもたちはそれなりに楽しみ、不満はなかったです。私は心の底からほっとしました。
限られた休日、正直夫の気持ちよりも、子どもたちがどう思うかが大切です。広い空間で、気持ちも晴れたところもあったのかもしれません、子どもたちは。
でも私は、遊園地へ行くならば、お弁当をつくって持っていきたかったです。
結局、お昼は、歩きまわってやっと見つけたたこ焼きと、自販機のジュースでしたし。
走り回るかもしれないなら、子供達に着せる服も少し違うものを用意したはずです。
私にとっては、どこに行くかが決まったら、
何を持っていくか、何を着せるか、お金はどのぐらい準備するか、靴はどれなのか。
そういうところから、お出かけが始まります。
それが動物園なら、事前に情報も調べます。
どなたかがおっしゃいました。
「行くと決めたときから、旅は始まっている」と。
夫には、そういう考え方は、おそらく理解できないんでしょう。
私は、私の楽しみを壊されたような気がして、長いこともやもやが消えませんでした。
いつも、休日は私が子ども二人を連れて、三人で行動していました。
ショッピングモールのフードコードへ行くと、まわりにはお父さんも一緒のご家族がたくさんいらっしゃいます。
子どもから、(パパがいなくて)寂しいという言葉は聞いたことはないです。いないのが当たり前、ぐらいになっていましたので。
それでも、私としてはこのお出かけは、家族四人ですごせる貴重な機会だと思っていたので、よけいにがっかりしたんだと思います。
無力感といいますか、とにかく疲れました。
世の中には「行き先変更?楽しそう!」と笑える奥様もいるのでしょう。
でも、石橋を叩いて渡るタイプの私にとって、計画を壊されることは、例えるなら丁寧に書き上げた予定表をビリッと破られたような、悲しさがありました。
子どもたちは、大人になった今も「遊園地事件」として、記憶があるようです。
そこはやっぱり、ISFJとINFJですから。
記憶力は、私に近いのかもしれません。
▼胡桃の独断によるMBTI的分析
夫にとっては「今、いいと思うもの、気持ちのいいこと」が一番大切なこと。
だから、ときには人を傷つけるようなことも平気でやります。
で、やってから、こちらからの抗議を聞いて、やっと気づく。
その繰り返しです。
まさに「悪意の不在」。
もう私は、この言葉は大嫌いになりました。
私から見ると、「短慮、浅慮、気遣いなし、自分だけのことを考えている」と映ります。
彼側の言い分をAIの力を借りて翻訳してみたら、
「圧倒的な即興性と、今この瞬間のワクワクを家族に届けたいという、彼なりのサービス精神」なのだそうです。
いやいや、そのサービス、受け取る側の準備ができていないんですけど……と、私は突っ込まずにはいられませんね。
夫にしたら、「動物園より遊園地のほうが面白いらしい。きっと家族も喜ぶぞ!俺ってなんてすごい思いつきをする天才!」ぐらいに思っていたのかなと推察します。
いや、喜ぶかどうか、もっと考えてほしいです。絶望的に、察してくれないです。
またAIの言葉を借りると、ESTPは「無邪気な暴君」だそうです。
彼らの中では「俺=家族=世界」が地続きになっていて、自分のワクワクという「正解」を家族にプレゼントしたつもり。
だから、感謝されるどころかフリーズされると、「せっかく最高のアイデアを出してやったのに、なんで盛り上がらないんだよ!」と、本気でショックを受けてしまうんですね。
悪気がない人を責めていても、なかなかこちらが納得する答えは返ってきません。
だから、自分で自分をなぐさめ、我慢する癖がついてしまいました。
そういうとき、自分の好きなもの、大切なものを思い出すのがいいですよ。
それを楽しむ時間がなかなかなくても、大事に心の奥に持っておくことは、とても助けになると思います。